おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

「猫ヲ読ム」ヲ読ム

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 daikatotiさんのブログ「糸巻きパレットガーデン」の中で「猫ヲ読ム」が紹介されていた。早速読んだ。職業・年齢・男女・時代を問わず、いろいろな人が書いた猫ばなしが山盛り、こたえられない。
 
「目ば掻裂(かっちゃ)がねっこ」「あとはどこを掻裂いでもいいっこ」
 雄猫同士はそう宣言しあってから喧嘩を始めるのだ、と、佐伯一麦の祖母は教えたという。猫が喧嘩の前にあげる絶叫を久しく聞かないが、これを読んだら聞いてみたくなった。

 石井桃子は半月ほどの旅のあいだ、同居人に世話を頼んだ飼い猫のことが気になって仕方無かった。旅が終わり、寒い夜明けに帰宅すると、彼女の部屋のカーテンの隅がちょっともちあがって、そこから小さい猫の顔がのぞいていた。木戸から出て行った人は木戸から帰るとつゆ疑わず、ひまさえあればそこからのぞいていたのだろう、と。

 浅田次郎は、六匹の子猫を育て上げた猫夫妻を見て言う。人はおのれの出自や生い立ちをとやかく言う。人生を親のせいにする。二匹はともに捨て猫で、親の愛情など知らないのだ。
 ひとは猫にはとうていかなわない。

 森下典子の家の庭に野良猫が子を産み、里親が見つかるまでしぶしぶ面倒をみた。それまでは猫の顔をよく見た事もなかった。毎日子猫たちを見ていると、一匹一匹がちがい、すでに出来上がった自分に生まれ、その自分を生きているのだった。

 小池真理子は犬派だったが、夫が拾って来た三毛猫との出会いで愛猫家に変わった。「家の中のどこかで、猫がぐっすりねむりこけている、というだけで、家全体が暖かく、豊かに息づいて感じられる」「猫のいる家、と言うのは、不思議な事に、特有の気配があるものだ」と。

 二百数十編にのぼる、豊かな猫ばなし。ほんとにいい本を教えて頂いた。
 「すでに出来上がった自分に生まれ、その自分を生きている」で、すぐクン坊のことを思い出した。捨て猫がさまよってきてうちのねこになったミーは、ムー、メー、モーの三匹を皮切りに沢山の子猫を産んだ。魚沼への引っ越しにつれて行き、そこで生んだ子猫のなかに、飛び抜けて好奇心の強い子がいた。ふらふらしながらやっと歩くような幼さで、箱にくり抜いた出入り口へ来て外の世界を興味深そうに見る。人の動き、子供の動きはことにおもしろくてたまらないらしい。なんでもよく匂いを嗅ぐのでクン坊と名付けた。
 一人でいるとき親猫のように彼の首をくわえて四つん這いで歩き回ったりした。そう幾つも猫を飼うわけにはいかないというので、貰い手があればやらなければならない。クン坊と別れたくなくて、貰われて行ったとき泣いた。彼は大人になりきらないうちに事故で死んだので、なおさら、あんなに別れたくなかったのにどうしてやってしまったのかと長く悔やんだ。
 
 人も「すでに出来上がった自分に生まれ、その自分を生きる」のか。出自や生い立ち、親のせいには出来ない自分を。
 あーほんとうに、ねこのいないこの世など、考えられない。

 小池真理子のはなしで思い出す、私の古い歌あり。

猫ひとつ居ればほのかにあたたかき家よと思ひ日暮れを帰る

 冬の夕方、一日留守にした家へ帰る時の歌。いまの家へ移ってからのことで、ねこはオジだったろうかぶーちゃんだったろうか。先々代のオジはミーのおしまい子で、お人好しだった。先代のぶーちゃんは長女が伊勢原から連れ帰った、家ねこ出身ののらだった。すばらしく賢かった。



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by buribushi | 2018-01-13 01:13 | | Comments(8)
Commented by daikatoti at 2018-01-13 10:04
石井桃子さんの猫が二階のカーテンの隙間から木戸の方をじっと見ていた、というの好きなんですよ。
なんだかうるうるしてしまいます。木戸から出たものは木戸から帰ってくる、信じて疑わない。

安部譲二さんの、従兄弟に預けた猫を、もう4年もうちにいるのだから返すわけにはいかないと言われて涙ぐんだ、というのもいいなぁ。

気に入っていただけてよかったです。
猫好きアルアルがいっぱい詰まってますよね。

猫って、同じような顔してますが、一匹一匹に確かな性格の個性があってすごいなぁと、いつも思うのですよ。
Commented by buribushi at 2018-01-13 12:05
daikatotiさま
ねこばなし、大好きなんですよ。ほんとにいい本を教えて頂きました。
石井さんの話も安倍さんの話も好き。ピースは「里親捜し」というねこのシェルター出身ですけど、長女の所のボビ、故ジョン、と同じ。大学生が貰って、小さい箱に穴をあけたのに入れ、学校へも持っていってミルクをやっていたそうです。
夏休み、田舎の八戸へ帰るけど、アパートに水と餌をどっさり置いてピースを置いていくと次女に聞き、そんなことしたらねこ死んじゃう!と怒った私が1週間あずかりました。
ねこ好きが子猫1週間あずかって返せるわけがないです。少しも鳴かないねこでしたが、獣医さんが、鳴いてもだれもいない暮らしだったんでしょう、と言われました。いまはよく鳴くし気が向けばオアヨー(お早う)も言いますよ。
ねこ嫌いでほかのねこにすぐフーッ、シャーッと怒るし、人にもなれにくいですが、あれはああいうヒト、だと、本を読んでなおそう思いました。ねこのいない暮らしは考えられないです。
もうトシだから、終わりまで面倒見る自信が無いと言っていたのに飼い主里帰り事件で一転またねこ持ちに。もしかして下の娘にはめられたのかもしれないけど、有難かったです。
Commented by mikeblog at 2018-01-13 18:10
人は夜を徹して語り合える話題を3つ持っていればいつ何時でも困らない、と聞いたことがあります。私はその一つは猫話でもう一つは山の話、もう一つは何でしょうか。自信を持てる趣味も腕も無いのが残念です。
猫は子供の頃からいつも居ましたので居るのが当たり前になっています。
「猫ヲ読ム」フムフム。最近は猫ブームで猫の本が多いですね。戌年なのに猫のカレンダーもあって、猫たち頑張っていますね。
Commented by ミミの父 at 2018-01-13 21:56 x
雪が大変ですね。
雪仕事が終わって、ピースちゃんを見ながら「猫ヲ読ム」。最高ですね。
家は家人が動物嫌いで娘は猫アレルギーなんで。(T_T)
Commented by buribushi at 2018-01-13 22:27
ミケさま
>話題を三つ
じゃあわたしは沖縄、ねこ、花、かな?お菓子でもいいよ?摘み草でも。おしゃべりだから、何でも一晩くらいいけると思う。
ねこは、子供の頃はねずみを捕るために必ずいましたね。
でもその頃は、ねこはねこでしかなくて、いまみたいにヒトと混ぜちゃってるようなつきあいかたではなかったような。
さて今夜の雪の降り方はいかに。
Commented by buribushi at 2018-01-13 22:30
ミミの父さま
この冬は雪の始末出来るかしら、降ったらどうしようと思っていたんですけど、なんとかやっています。願わくばもうご勘弁、と思いながら。
ねこと、何となく気心が通じるように錯覚しながら暮らしています。
Commented by itotohari at 2018-01-15 22:27
こんばんは。
この本、私も読んでみたいと思っています。
すばるさんは、猫物が大好きなんですね♪(*^ω^*)
でしたら是非にオススメの本があります。もしかしたらもうご存知かもしれませんが、寒川猫持さという歌よみさんをご存知でしょうか?(本業は眼医者)以前、教育テレビやラジオにも出ていたらしいので(私は見たこと無いです)
少々古い本ですので本屋さんには無いかもしれませんが、図書館や古本屋さんになら置いてあると思います。それからAmazonのkindle版などでは無料で読める本がある様です。(コレまた利用した事が無いので仕組みがよく分かりませんが)
Amazonで「寒川猫持」で検索していただくと作品が出てきます。
この先生と飼い猫との、なんともおかしく切ない歌集です(^^;;
そして寒川猫持先生も安部譲二さんと同じく山本夏彦先生のお弟子さんらしいです。
Commented by buribushi at 2018-01-15 22:50
itotohariさま
「猫ヲ読ム」はお奨めです!涙がにじんだり笑い出したり、ねこがもっと好きになります。
寒川猫持さんの本は持っていませんが、読んだ記憶はあります。
山本夏彦・安倍穣二ですか、みんなクセモノ^^ついでに山口瞳もクセモノ^^瞳の息子の庄助(正介)の本を読みましたが、せつないものでした。猫の本によれば、人はみな自分として生まれ、生きるので、親のせいではないそうですが。
一時山本夏彦の本を沢山持っていました(文庫本)が、いまはあまりないかも。内田百閒(けんの字出た!)も初版本沢山持っていましたが文庫本を残して整理しました。

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