おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

ブログ「モノも身の内・実家考」に出会って②

 約50年の昔になるが、養父の死後1年ほど一人暮らしをした養母が岐阜から私どもの新潟のうちへ移って来た。 
 引っ越しのため夫と私が岐阜へ行ったところ、家の中は暮らしていたそのままで、引っ越しの用意どころか荷物の仕分けもしてなく、その日食べた食器も洗ってなかった。正味三日で家一軒分の品物の荷造り、食事の支度もして貰えないのでそれも自分で何とかしながら夜昼なしに働き、引っ越し当日車が来るまでに何とか、詰めたり包んだり括ったりし終えた。掃除もした。車の中では眠りこけたものか、道中の記憶は一切ない。
 帰り着いて荷解きを初めて見ると、大きな箱一杯に古いカレンダーがつまっていたり、空き箱、包み紙、紐類が入っていたりした。「何がどこにあるかちょっともわからせん」と当分言われ続けたものだ。なにもしてないんだもの、わかるわけがない。
 当時の養母は60代半ば、いま思えば体力その他の能力もまだのこっているはずの年代で、どうしてあんなことが出来たものだろう。「今までいっぱい難儀したでうちのことはせんでな。子守りもせん。」と宣言して、ほんとうに何もしなかった。   
 3歳の長男が「遊ぼう」と離れの戸を叩いても開けず、外から回って廊下から入ろうとして落ちて泣いても「おれが落としたやっちゃないでな」と肘枕で見ていた。末の子が生まれたときは赤ん坊の顔も見ず、私の産屋(20日間)の明けぬうちに湯治に出かけ、半年帰らなかった。向こうが子であれば勘当?したところだ、と今でも思う。
 母は、あんな人と分かっていればお前をやるのではなかった、と言った。父はあいつの話は一生分以上聞いた、と、入院したときも見舞いに来ず、死んだら行く、と言っていたが、その時も来なかった。養母87歳の一生だった。
  
 養母の引っ越しの頃まだ生まれていなかった私の末娘は、いま片づけ屋を生業にしていて、引っ越しはもちろん、住む人のいなくなった一軒家の片づけや、「夜逃げさん」の後始末を家主にたのまれたり、ごみ屋敷の処理をしたりする。私の、養家引っ越し経験を話した事があったかどうか。話してないような気もする。

 私にあの人が授かった意味、というものがあるんだろう。私という昔子どもは、逃げ出すということもしなかった。出来なかった。不甲斐ない。
 悪縁も縁のうちとすれば、よくよく縁の深い間柄だった。みんな済んだことで、もう、無い。良かった。いまの平安はその代わりに天が下さったものかも知れない。

 

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by buribushi | 2018-01-03 22:15 | ひと | Comments(8)
Commented by monomo-mino-uchi at 2018-01-04 23:52
岐阜からの引っ越し作業・・
そのご苦労、本当にお察しします。

文章を拝読していて、
私もフラッシュバックが起きたようでした。

私が出会った人の中で、
一番分かり合えなかったのが、母。

「人様に迷惑をかけるな」と言い続けた母が、
傍若無人に振舞う今の姿を見ると、
我が親ながら、辟易します。

体力的に厳しくても、
すばるさんのように、
せめて「片付けたい!」という、
気持ちだけでもあれば、
心から寄り添えるのに・・と思うのです。
Commented by mikeblog at 2018-01-05 00:52
年度末から新年にかけてはいつも思う事ですが「来し方行く末」を思うのが毎年のことです。若い時はそんなことは思わなかったのに歳を取ったという事でしょうね。
旧畑の側で親しくしていただいた山野草のご主人が暮れに体を壊されて入院されている時に読売新聞に投稿された歌が載っていて
「どの家も世代代わりて人住めリ 見ながら通るうぶすなの道」
やはり昔のことを思って詠まれたのでしょうか。
Commented by kazuyoo60 at 2018-01-05 09:01 x
>当時の養母は60代半ば
どうやら早めに老け込まれたようですね。
色々あっても、あなた様方ご夫婦に、最後まで面倒を見てもらえて助かられましたね。
Commented by buribushi at 2018-01-05 11:35
まりくまさま
わたしは、もう終わったんだから思い出すまい、という気持ちと、いかに大変だったか人に聞いて貰いたい身持ちとあるんですね。
書いても書き切れない事をどっと思い出して苦しかったので、やっぱり忘れるに如かず、

そして、いいトシヨリでいたいという気持ちが強いのは強烈な反面教師のオカゲなんでしょうね。
Commented by buribushi at 2018-01-05 11:44
ミケさま
新年。私の今年の文字は「捨」ですね。
要らなくなったのにすてられないもの、
要るようでも、やっぱり無くてもいいもの、
思い出しても仕方が無い記憶、
などなど、捨てよう捨てよう。
まず、モノから捨てて行ったら、気持ちの方もかたづくのではないか?
あと、感謝することがいっぱいあるのを常に思っていたいです。
美味しく食べ、暖かく眠れる。
するべき仕事がある。
まわりに機嫌良く暮らしている多くの人。
ねこも花も野菜も、みんな有難し。
Commented by buribushi at 2018-01-05 11:48
kazuyoo60さま
老け込んだというより、やっぱり精神のあり方が間違っていたんでしょう。かわいそうなことではありました。一番近くに居る者はたまったものではありませんが。もう少し付き合いが長引いたら私は壊れたでしょう。
Commented by ikoka at 2018-01-10 12:47 x
母で苦労する人の多いことやら。
あんな母には絶対なるまいと思ってきました。
息子らにはあんないやな思いはさせたくありません。
早く死にたいと書きましたが、いろいろな計算をしたら、74歳までいきないと、元が取れないことが判明。主に税金からの計算ですが。74まで脳も仕事が出来、身体も動く、ことを目標にがんばります。将来(といっても還暦ですから)を悲観していましたが、ちょっと立ちなおりました。ありがとうございます、すばるさん。
沖縄も海外も行きたい、という気持ちになりました。
また、たんかんをおくりますね。
Commented by buribushi at 2018-01-10 14:04
ikokaさま
人さまのブログで片付かない親のことを読んだら、養母の事を思い出して寝付きが悪かったり、眼が覚めてじっと闇を睨んだり、くたびれています。
忘れようったってわすれられないもの、思い切りかき口説き吐き出し、人に分かると言って貰えばいいのかと思ったりします。
私は子どもと孫がそれぞれの人生を健康で機嫌良く生きているのが幸せです。
養母とは私が結婚して数年、離れていただけです。晩年入院した老人病院で、介護の人に「私も仕事で多くの老人を見て来たが、あんな人は初めて。苦労しましたね、よく辛抱しましたね」と言って貰ったときは、へたへたとくずおれそうになりました、あまりにも有難く嬉しくて。本人が一番不幸なんでしょうが、私も壊れる寸前でした。
還暦!お若ーい!わたし80になったいま思うに、そんな頃は壮年ですよ。
還暦少し前からいまの仕事(新聞や雑誌で投稿作品の選)を頂き、楽しく張り合いあり。
大きな短歌会に40数年属していましたが女性からのパワハラで退き、団体は懲りた、と一匹ねこ(一匹狼を名乗れるほどの者ではない)を通しています。
わたしikokaさんより20は年上らしいけれど、まだ生を諦めていません。
今年はもの捨て、と旅。残りの力で、やりますぞ。
ただいまは、養母フラッシュバックから早く脱出する事が第一ですね。もう、済んだんだから。もう、無いんだから。良かったね、と。

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