おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

つばた英子さん-輪郭のない大きさの人

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つばた夫妻のことは、3,4年前に「あしたも、こはるびより」という本で初めて見た。
愛知県の高蔵寺にあるニュータウンは夫のつばたしゅういちさんが設計を手がけた町で、その一郭に200坪のキッチンガーデン、30坪の雑木林を作って小さいお家に住んでいる。
お家は72平米のワンルームで、同じ平面に食べる空間、眠る空間(籐のベッドが二つ)、仕事の空間、などがあり、仕切りはない。小さいキッチンは換気扇も給湯器もない、男の人はキッチンが家の中心だと言うことは解らないから。でも慣れたらなんともない。と英子さん。
おうちに玄関は無く、どこからでも入ってください、という造り。
この本のとき、二人は83歳と86歳だった。野菜と果実はほぼ自給、だけで無く、新鮮なままや、加工したものを次々娘や孫、友だち、に贈る。

昨年6月、草刈りから戻ってきて「ちょっと貧血がおきた」とベッドに入ったしゅういちさんは、お昼寝をしながらそのまま亡くなった。90歳。前日、障子と簀戸を入れ替え、麦茶用の麦の脱穀(ビールびんで叩く)、お昼寝のあとは小梅の収穫を済ませていた。
「ひでこさんのたからもの」「ときをためる暮らし」「ふたりからひとり」と読んできた。

造り酒屋の娘だった英子さんはしゅういちさんと見合い結婚したが、「空気みたいに気にならない人」と一度で気に入られたのだという。
お金が足りない話をしたら何日も暗い顔をされたので、それから一切お金の話はしないで、持っていた自分のお金や、宝石などでやりくりした。
4万円の給料のとき70万のヨットを買うというしゅういちさんに、そのお母さんから借金して月々給料から返すようにした。貯金は当時も、現在も、無い。
洋服でも時計や靴でも、最高のものを買うと一生保つと、しゅういちさんに買った。家具や器も、最高のものが買えるまで待って一つずつ揃えた。
しゅういちさんは仕事を変える時も、辞めるときも、相談はなくていきなり。こはるびよりのような気持ちでいたいから、英子さんは何も言わない。
しゅういちさんはヨットマンで慣れた洗濯をする、英子さんが使い易いように農具の柄を付け替える(雑木林の木の枝で)。畑を合理的に出来るよう、同じ大きさに区切って作り変える(相談はない)。英子さんがなにをしても何を買っても、なんにも言わない。
「寄りかからずに生きる」「最後まで自分の足で立って生きる」は、しゅういちさんがよく言ったことだという。

心の貧しい者だったら、お互い文句を言ったり諍いをしても何のふしぎもないような中を、楽しく精一杯に生きて来て、新しい本の帯にある言葉は「人生が完成する日」。
しゅういちさんも大きい人格だと思うけど、英子さんの大きさは輪郭のわからないような大きさで、お二人の幸福はそこに因るところが多いと思う。しゅういちさんをしあわせにして、英子さんはしあわせになった。


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by buribushi | 2016-12-18 23:53 | | Comments(6)
Commented by mikeblog at 2016-12-19 00:40
>しゅういちさんをしあわせにして、英子さんはしあわせになった。 この言葉に尽きますね。
畑友とのおしゃべりの中で理想の亭主は「執事」だよね、なんて言って笑っていますよ。

Commented by kazuyoo60 at 2016-12-19 07:06 x
滅多にないご夫婦のあり方、生活の仕方、そして温かな思いやりと。気持ち的に、この夫婦のような生活は私には無理ですが。
何歳からこの家に住まれるようになったのかと思ったりしています。
Commented by buribushi at 2016-12-19 15:39
ミケさま
>理想の亭主
機嫌のいい人、でしょうね。
英子さんは、普通のひとなら愛想尽かすようなこと(貯金無しで、年収より高い買い物をしたがるとか)もちゃんと通してあげて、相談無しに仕事を辞められても怒らなくて。
でも、自分の考えで家の中のことを全部やってきて、そのことにしゅういちさんは何も言わないでにこにこしてたわけでしょう。
お互いに器が大きいんですね。その通りにはなれなくても、心に置きたい事です。
Commented by buribushi at 2016-12-19 15:44
kazuyoo60さま
このかわいい家を建てて40年くらい、らしいです。ワンルームに寝室も食堂も兼ねて、人にご馳走するのもその部屋で。
(玄関がなくてどこからでも入る、って、むかしの沖縄の家みたいです。縁側から入るお家は何度も見ました。)
心のあり方ひとつでこんな一生も送れるんだなあ、と、感嘆久し。
Commented by sakko at 2016-12-19 23:59 x
我亭主はまぁ、普通の亭主でしたが
あまり干渉しない間柄でした。
寄りかからないで生きてきましたから
一人になっても大丈夫でした。
Commented by buribushi at 2016-12-20 12:00
sakkoさま
>寄りかからないで
それが大事ですね-。
英子さんは寄りかかっていなかったけど、しゅういちさんは嫁というより母親のようにおもっていたんじゃないかなー。後に残ったら大変と、本人も娘さんたちも言っていました。

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