おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

象牙色の角が生えた小さな鬼-「家守綺譚」など

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この作家の物を読むのは初めて。文庫本の帯に又吉直樹が紹介文を書いていたので手に取ったのだった。
主人公は「駆け出しの物書き」で、ボートで行方不明になった学友の家に「家守」として住む。ある日床の間の掛け軸の絵からボートに乗った友が現れて言葉をかわし、また絵の中に帰って行く。それからも時々出現する。

庭のサルスベリの木に「懸想」されたり、拳より小さい鬼に出会ったりする。小鬼はとうもろこしのヒゲに似た髪のなかから、まごうことなき象牙色の角が見えた。自分の何倍も重そうなフキノトウを軽々持って帰って行く。
水に入れればまた河童に戻るという干物?を拾ったり、和尚からタケノコを貰った直後にまた同じ和尚がタケノコを持って来て、今朝狸にタケノコを掘られた話をしたり。

異界とこの世が入り交じる日々、それを少しも不思議がらない隣のおくさん、やってきて居着く犬は友が名付けて行く。彼が生前飼いたかった犬。
それを食べれば自分も異界の人となり、日がな一日憂いなくいられるようになるみずみずしい葡萄をすすめられて、主人公は食べない。そういう生活は-「私の精神を養わない」。友はきっと葡萄を食べたのだ。

幻想のような話のなかに、いきいきとほんとらしいところがまじり、読み終わるまで眠るわけにいかなかった。



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同じ作家のエッセイ集。学生時代を過ごしたイギリスの下宿の女主人やそこの住人達の人間像が深くいきいきと語られる。英語を母国語なみに話せる人の外国暮らしとはこういうものなのか。

列車で旅行したとき、確かに切符を取った個室に、車掌が入れてくれない。通路に面した席をここだと言う。彼の態度に軽い人種的偏見を感じ、一歩も引きたくない。
いろいろあって、個室に入ることが出来た。車掌がベッドメイクに来る。
「あなたが私の言うことを信じてくださらなかった、あのとき。わたしは本当に悲しかった」
うつむいた彼の顔が一瞬で真っ赤になり、何も言わず黙々と作業を終えて、おやすみなさいだけ言って出て行く。
列車を降りるとき、彼は手を取って「いいご旅行を」とつぶやき挙手の礼をした。「ありがとう、あなたもいい週末を」このエピソードも印象深い。

ウィンストン・チャーチルとそのナニーとの心あたたまる関係は、まるで太宰治と越野タケさんとの関係のようだ。という一節は、たちまち理解出来るたとえ話で、こういうとき自分が本好きであることを幸せに思う。

また、この作者の本を次々読むだろう予感。


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by buribushi | 2016-01-07 23:28 | | Comments(4)
Commented by mikeblog at 2016-01-08 00:16
こういう不思議な話は大好きです。大人の童話みたいな感じで、怪談とはまた違ってひょっとするとあるかもー、と思わせるところがいいですね。こんなの読み出したら寝てられないですよ。
Commented by buribushi at 2016-01-08 08:57
ミケさま
また出会っちゃいました、好きな作家。
幸い文庫本が数出ているみたいなので、あれもこれも読もうと楽しみにしています。
絵の中の池から船がこぎ寄せてくるのは読んだことがあるけど、脱皮した河童の皮膚が「緑を含んだ白い粉をはたいたような」色をしている、とか、サルスベリに懸想されて、本を読み聞かせてやっている、とか。
Commented by kazuyoo60 at 2016-01-08 09:46 x
夜更かしもまた良しですね。お気に入りの本に出会われました。このまま帯の文章にされてもです。帯で良かったのかな?。
Commented by buribushi at 2016-01-08 10:44
kazuyoo60さま
ついつい。面白いので止められなくて。本好きでよかったですよ、そして、自分で本買える、いつでも買える、って、いまが一番幸せな状態。
この作者の本、新潮文庫にたくさんあるみたいなので、本屋で探す楽しみも味わいましょう。
帯とか、こしまきなんて言う人もいますね。

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