おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

森於菟 「耄碌寸前」

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森茉莉の母親違いの兄、於菟の随筆集である。
覚えが無いほど幼い時に両親の離婚で母を失い、里子に出されたり、祖母と曾祖母に養育されたりした。その後自分と10歳しか年齢が違わない若い継母を持った。
母をひたすら愛している茉莉が描いてさえ、於菟にもの柔らかに優しい母だったと思えないが、そういう寂しい育ち方をした人のこの飄々とした老いっぷり。

鴎外の死は萎縮腎を病んだためとされて來たが、重い肺結核だったことが明かされている。
しげ(茉莉の母)が、あんたのお母さんにうつされたのだと言ったことがあるが、継母継子の間柄で素直に聞けなかった、とか、死の床の鴎外にしげが取り乱して泣きつき、鴎外の友人の賀古氏に「見苦しい、黙れ」と一喝されたとか、茉莉のものだけ読んでいたのではわからなかった面が多く出てくる。

医師である於菟が、解剖にまつわることをいろいろ書いている。事実を見て来た人の、筆力ある描写、読み返そうとは思わない。この部分を見て、選択肢のひとつとしてありかと思ったこともある、献体は絶対にしたくなくなった。

於菟が男児二人を海水浴に連れて行った時、子どもを浅瀬に遊ばせて、自分はゆうゆうと一回り泳いできた。と、見せかけて、背の立つ深さで頭だけ水面に出してただ歩きまわったのだ(泳げない)というところなど、お人が見える。




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早く随筆家として名の出た、茉莉の妹の小堀杏奴「晩年の父」を読み、茉莉の多くのエッセイを読み、いま、兄於菟の書いたものを読む。その、父母の家の見方の相違。
「世界は自分の感受性で出来ている」というのは、真実に違いない。

鴎外の家だった「観潮楼」の末路も読むにくるしいが、店子の失火により全焼したとき、ほっとした部分もあると於菟は言っている。その後の土地は市に寄付されて、いま鴎外の文学碑が建っているらしい。



by buribushi | 2015-09-01 22:05 | 本・短歌など | Comments(6)
Commented by mikeblog at 2015-09-02 01:35
よく読書をされていますね。こういう手の本は読むと知識が増えて自分だけの満足感に浸れます。〇〇寸前というのは聞きますが「耄碌寸前」とはなんとまあ! でもこの耄碌寸前、気に入りました。耄碌は困りますからずっと寸前でいられるように頑張りたいです。
Commented by buribushi at 2015-09-02 09:34
ミケさん
>よく読書
活字中毒、というやつですね。
子どものころ、2歳下、またその2歳下、と、きょうだいが多かったから、絵本を与えて置くと何時間でも一人で座っている子は助かったでしょうね。「講談社の絵本」というの、今でも暗記している文章がありますよ(最近は「寸前」なのでよく忘れる)^^
Commented by kazuyoo60 at 2015-09-02 10:48 x
立場によって、良くも見えたり見えなかったりです。それで良いのだと思ってはいますが。一筋縄ではいかないですね。
Commented by buribushi at 2015-09-02 11:15
kazuyoo60さん
茉莉の末弟の森類が本を書いたら、姉の茉莉と杏奴から自分たちのことをあからさまに書かれていると怒り、絶対出版しないようにと圧力を掛けたそうです(結局出版されている)。
すぐれた人ばかりの一族も大変ですね。
Commented by t-haruno at 2015-09-02 20:45
並んだ本の写真を見つつ
まさか鴎外も、ここまで子供達が揃って文章を書き、世に出すことになろうとは・・・・・
思っていなかっただろうなぁ
と思いました。
ここまで色んな角度から書かれることになろうとは。
でも、それだけ書くことのある存在であり
書かれたものを読まれる存在なのだな
と、あらためてその大きさにうならされています。

それにしても、くだんのクレマチス。
本来も、この時期に伸びるものなのでしょうか?
木がすっかり無くなってしまった時、本当にガッカリされていたので
この復活ぶりは嬉しいことでしょうね。
毎日、伸びっぷりを確かめに行くのが楽しいでしょう。
Commented by buribushi at 2015-09-02 22:07
t-harunoさん
茉莉が全面的に肯定し、温かく頼もしく描いた鴎外も、苦労したのだなあと下世話な感想を持ったり。
いや、「世界は自分の感受性で出来ている」のだから、鴎外はいつも纏っていたというかぐわしい葉巻の香りに象徴されるような、自分の世界を作っていたのだろうと思ったり。
森類(茉莉の末弟)の書いた本も読むよう、手配してしまいました。

クレマチス、ほんとに奇跡的復活、というのがわるければ劇的復活。毎日朝夕見ています。本来は秋が更けてから刈り取り、春、地下の根から発芽して来るのです。
やや華奢ながら地面からちゃんと伸び上がっています。

あ、「世界は自分の感受性で出来ている」というのは、高山なおみの旦那様スイセイの話の中にありました。

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