おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

白いサンザシの花のように

a0203003_16451131.jpg

昨年の晩秋、脇の畑のウコンを穫り入れて、その葉を蒸留した。
ウコンを植えるのはこの葉が欲しいためで、出来た蒸留水には5%ほどのグリセリンを足して化粧水にする。
秋が温かかったのとなまけ心で遅れて、霰が一度降ってから慌てて刈り取ったウコンの葉は裂けていたが、蒸留水はいつにもまして香りが高く、きらきら浮く精油も目立った。
それからまた遅れて、グリセリンを手に入れてボトルに詰めたのは暮れ近くになった。
朝夕掌に取って、冷たいのを叩くようにつける。あと、ありふれたクリームを、両手をすり合わせてから顔につけて、手入れ終わり。

既製品の、安いけど急な日焼けのほてりなどこれが一番効く化粧水は、市外まで買いに行くのも通販で取り寄せるのも面倒なことでよく品切れになる。手製の化粧水を作って冷蔵しておくのはそのためで、ローズマリー、柚子、月桃などを蒸留してきた。
ウコンが一番好きだ。つかい心地もいいが、使っているとほんのり白くなるような気がする。作るのが何時も、日光の少なくなる季節だから、とは思うけど。
自分だけキレイになるように、誰にもあげない。いや、本当は、あまり量が出来なかった。

a0203003_16455951.jpg

自分で化粧水を作ると、必ず思い出す本の一節がある。
ジョルジュ・サンドの、原題「ラ・プチット・ファデット」を宮崎嶺雄が訳した岩波文庫「愛の妖精」に出てくる、みなしごのファデットは、年老いたおばあさんに育てられて身なりも行儀もあまりかまってもらっていなかった。
すきな人が出来て、男の子の出来損ないみたいだった彼女が一変する。
衣装はすっかり洗濯して、裁ち直して、縫い直してあった。「木っ端にきものを着せたような」ところがなくなってすんなりしなやかに。
「おまけに、一週間の間、どんな花や草をどう調合して使ったものか、顔はほの白く、手は可愛らしく、白い山査子の花みたいに、くっきりと優しく浮き上がっている」
というところ。

この牧歌的な愛の物語は、フランス革命の混乱に巻き込まれて絶望した作者が、こういう時代には穏和な物語によって人を慰めることこそ芸術家の使命、という友の言葉に動かされて書いたものだったという。

私が持っているのは昭和11年初版、昭和26年第12刷発行のもので、背綴じの糸も切れ、しみだらけになった一冊。何十回読み返したことか。



by buribushi | 2015-01-03 13:13 | 作る | Comments(8)
Commented by kazuyoo60 at 2015-01-03 14:43 x
いつも上手にお作りです。ウコンの葉は良い香りでねと同じ味を感じました。ちょっと噛んだだけですが。
Commented by buribushi at 2015-01-03 21:32
kazuyoo60さん
ウコンを蒸留したくて家庭用の蒸留器を買ったのでした。いろいろ蒸留しますけど、やっぱりウコンが一番、と感じます。
自分で化粧水を作りたい一番根っこはやっぱりプチット・ファデットですね。本がバラバラになっちゃったので本屋で探しましたが、置いてありませんでした(品切れではない)。
Commented by ohisama at 2015-01-04 16:58 x
愛読書の中身から化粧水を作ろうと実行に移されるすばるさんはやっぱりすごいですね。

テーブルクロスはコギン挿しですか?すばるさんの手作りでしょうか、赤い布に白い糸の縫い目がとてもすてきですね。
若いころから刺繍が大好き、作品を見るのも好きです。

それにつけても雪の多いこと! この冬はまだ雪かきやっていないのです。
それもつかの間、いずれドカ雪がお目見えに決まっています。
Commented by buribushi at 2015-01-04 18:13
ohisamaさん
ファデットが何の花や草を調合して使ったのかなどとは書いてないし、この本を読み始めたのは何十年のむかし、化粧水を自分でつくるのはせいぜいこの10年かそこらなんですけど、気持ちの中では繋がっています。
>テーブルクロスは
いえいえ、これ、ただのバンダナです。私は不器用者で、刺繍など出来ません、針を使うのは心安まる事ではあるので、かんたんな縫い物はしますけど。
雪が早くから積もって今したが、今日はなんと雨ですよ。畑で雪に埋まっている大根やレタス、掘り出せるかも。
Commented by mikeblog at 2015-01-04 23:18
ウコンと言えば粉末を飲むと肝臓にいいんだとか? つい町の催し物の時のバザーで買ってありますが冷蔵庫に入ったまま。3回ほど飲んでみましたが苦かったです。
その葉が化粧水になるとはびっくりです。
Commented by buribushi at 2015-01-05 09:21
ミケさん
パウダーは私も沖縄の友だちに貰ったのがまだありますね。
カレーを作るとき、材料を炒めている段階で入れると色も香りも良く、苦みも気になりませんでした。お試しを。
葉っぱに「美白作用あり」というのを何かで見て、はじめたんだったと思います。
本屋へ行って見たけど、岩波文庫にまだあると分かっただけで現物はありませんでした。バラバラになるまで読んだし、もういいかな。と思いながら、万年筆のインクカートリッジだけ買って帰りました。
Commented by t-haruno at 2015-01-05 16:03
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
良い一年となりますように。

翻訳小説が大好きだった10代の頃、でも同時にロックを愛する少女でもあった私は、この小説の邦題の甘いムードに引いてしまいまして、
手に取らないまま、現在まで来てしまいました。
のどかで可愛らしいお話のようですね。今ならすんなり読めるかな?
「木っ端にきものを着せたような」。比喩表現は小説家の腕の見せ所だと思いますが、思いもよらない比喩で味わい深いですねぇ。
案山子が服着てるみたいな、とりあえず着てますみたいな感じでしょうか。面白いですねぇ。
Commented by buribushi at 2015-01-05 18:44
t-harunoさん
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。平穏な年でありますように。

本、バラバラになっちゃったので、買い直そうかと本屋さんを覗いたら品切れでした。あ、もういいんだよね、と思って。10代のときさんざん読んだけど、ばらばらになってめでたしめでたし。六十何年前の本です。
この前、やはり同じ頃読んだ「ポオルとヴィルジニー」を久しぶりに読み返したら、何かイヤになってストーブにくべてしまいました。こっちは表紙が取れていました。今年はあの頃の本が整理処分出来るのでしょうね。

日々の気楽なおしゃべりです
by すばる
プロフィールを見る
画像一覧

最新のコメント

sakkoさま ぽち袋..
by buribushi at 10:35
kazuyoo60さま ..
by buribushi at 10:27
可愛いポチ袋を見ると、買..
by sakko at 10:00
ポチ袋私も好きです。可愛..
by kazuyoo60 at 08:28
ミケさま >猫柄に弱い..
by buribushi at 23:27
ポチ袋のニャンコがかわい..
by mikeblog at 23:00
demi_zoさま そ..
by buribushi at 22:06
わ!コートに変身ですか!..
by demi_zo at 19:54
ミケさま >刺して刺し..
by buribushi at 14:23
daikatotiさま ..
by buribushi at 14:13
細かい仕事ですね。暇を見..
by mikeblog at 14:03
うわぁ、すごい! 拡大..
by daikatoti at 11:34
kazuyoo60さま ..
by buribushi at 10:40
kazuyoo60さま ..
by buribushi at 10:36
着尺1枚分、きっと夜なべ..
by kazuyoo60 at 10:03
鮭は漁獲量が不漁の去年よ..
by kazuyoo60 at 09:59
鍵コメさま そうなんで..
by buribushi at 19:10
kazuyoo60さま ..
by buribushi at 13:48
勢揃いしました。立派な大..
by kazuyoo60 at 10:09
ミケさま >尻尾はない..
by すばる at 06:20

メモ帳

◆gardening
   ☆kazuyoo60さん
     のブログ
◆ネコと飼い主その職業と
  趣味

   ☆ゴンベイさんのブログ
◆元気そうじ屋
   ☆片付け・そうじ屋さん
     のブログ
◆掟破り*キモノ日記

   ☆華宵さんのブログ
◆なんでもかんでも手帳

   ☆ミミの父さんのブログ
◆東成瀬通信「んだすか。」

   ☆杉山彰・あおい夫妻
     のブログ
◆気まぐれフォトダイアリー

   ☆咲さんのブログ

ファン

検索

ブログパーツ