おしゃべりきものⅡ-または、おしゃべりねこ

痕跡本

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新聞に「痕跡本のすすめ」という本の広告が出ていた。書き込み、破れ、挟み込み、張り込み、切り取りなど、前の持ち主が本に手を加えた痕跡からさまざまなことを読みとるというものらしく、著者は古書店主である。

私が沖縄の古書店で買った、上野英信著「眉屋私記」は530ページ余もある大冊で、ある沖縄人の手記をもとにしていてその引用も多く、読みやすいとは言えない。
立ち読みもしてそのことを承知で買ったのは、まさに書き込みの多さに興味を持ったからだった。

著者はうちなーんちゅでもないのによくここまで、と思うほど、その山入端万栄(やまのは・まんえい)の手記を読み込み、現地のメキシコにも取材に行きなどして、彼が身を投じた移民の事情や沖縄のこともよく調べて書いているが、本当のうちなーんちゅから見れば内容や言葉に不服があるのだろう、そういう意味の書き込みが多い。

目次の所には、そういう本の内容とは関係のない、覚え書きがはっきり読める。
スカイメート 東京片道24550円、計49100円
みちか(意味を理解せず)37300円
合計86400
と書いてある。
奥付によれば「眉屋私記」の発行は1984年3月10日であり、書き込みには3月16日に「書評用」としてこの本を受け取った、とある。

この航空運賃は、今の物価に照らしても安いと思えず、まして30年近い以前の貨幣価値から言ってずいぶん高い東京行きをしたのだということがわかる。
書き込みをした人は2009年に73歳で故人になった沖縄の作家で、グーグルでお目にかかったらいかにも縄文の末裔、という、力強い風貌であった。

私がこの本を買ったのは2005年以前だから、亡くなられて古書店に出た本ではない。ご自分で処分された本なら、書き込みのことにふれてもグブリー(ご無礼)にはあたらないだろうと思ってこれを書く。

上野英信は、山入端万栄「わが移民記」を読んで衝撃をうけ、メキシコへ取材に行くことにする。移民記を渡した琉球新報記者、三木健は、封も切らない給料袋を包んで餞別としたと、あとがきにある。



by buribushi | 2012-02-06 09:00 | | Comments(10)
Commented by EPOM at 2012-02-06 09:40 x
書き込みや傍線がひいてあったりすると古本はやすくなりますね
でもこのような読み説き方があるって素敵と思います
私は今「昔日の客を古本屋さんに頼んでいます
入ると思うわよ 電話しますよ と言われて人待ち心です
古本屋に来た貧しい青年がやがて何かの賞を取る作家となりこの古本屋さんを訪ねるという内容らしいです
版画が入っているそうで高いらしいけれど欲しいので食費をきりつめます(笑)
Commented by gonbey at 2012-02-06 09:44 x
良い装丁ですねー。
Commented by buribushi at 2012-02-06 10:58
EPOMさん
そうですね。私の沖縄関係古本は、ほとんどが宜野湾の「ブックスじのん」(じのんは宜野湾の現地読み)か、那覇市大道の曉書房で買ったものですが、曉書房は無くなっていました。
農業雑誌の取材で行ったとき、南風原の農家から教えて貰った(連れて行ってもらった)いい書店でしたが。
公設市場のそばに、「世界一小さい古本屋」と言っていたとくふく堂がなくなり、かわりに若い女性が「うらら」という店を始めました。ジュンク堂那覇店の副店長を辞めて古書店を選んだそうです。
ご子息とっくにご存知かもしれませんけど。
Commented by buribushi at 2012-02-06 11:01
gonbeyさん
さすが装丁にお目をつけられるのですねー。
あとがきによれば装丁は田村義也だそうです。
存じませんでしたのでググって見ましたら、有名な編集者にして装丁家、と。ほかの本も沢山出ていました。
おかげさまでひとつ賢くなりました(なんて言って、忘れっぽいけど)。
Commented by buribushi at 2012-02-06 11:05
gonbeyさんに追伸
この波頭みたいな模様、トンボ玉を作るときガラスの上に作りやすい模様のひとつです。
Commented by kazuyoo60 at 2012-02-06 12:32 x
ご本人の意図しなかった所で、お手元にですね。良い方に見つけてもらったものです。本に心が有るならです。
たんに落書きでも、歴史的な建造物では注目の的になりますね。
庶民を描いた画家・山本作兵衞氏・日曜美術館(昨夜)の断片を見ました。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2011/0911/index.html
高く評価されてるそうです。前にも見聞きの家にある気もしたのですが。美術的にもですが、記録の意味からも、人のしたことすることって面白いです。http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2011/0911/index.html
Commented by buribushi at 2012-02-06 14:03
kazuyoo60さん
書き込みも面白いと思えるものとっては、見つけた時がチャンスですよね。私、書き込みが中ったら買ったかどうか。
元になった沖縄人、山入端万栄のカナ混じりの分が読みにくい上、その引用が多く、資料としては価値が大きいとしても読み物としては読みやすく無かったです。
山本作兵衛氏の絵は私も報道でですが、見ました。
事実を伝え残したい気持ちがよくわかって、画家でもなんでもない人の絵が大切にされるのですね。
Commented by EPOM at 2012-02-06 14:12 x
息子は宜野湾市に住んでいました
知っているでしょうね
私が探しても無い本をポンと送ってくれたりしました。
Commented by EPOM at 2012-02-06 19:36 x
携帯メールで訊きましたら
「僕が行った頃はロマン書房といって池澤夏樹が未読の頂き本を
山のように売りに来ていたそうで
7,8年前に改称したらしいです 
息子は足しげく通っていたようです。
行きたいなあと言ったら「古本屋遠きにありて思うもの」と来ました
「そしてかなしく歌うもの」と返し「よしや!」と来て「うらぶれて」と返す
とうとう「帰るところはアルマジロ」で終わりました
面白通信です 夫妬みました (笑)
Commented by buribushi at 2012-02-06 21:09
EPOMさん
あははー、室生犀星カタ無しですねー。
私の痕跡本は「いれいたかし」という人の書き込み本です。詠進がよく書いてある本だけど、地元の人としてはまだあれもこれも書いてもらいたいし、ここは少しちがうし、とやきもきした様子が読みとれて、それも面白かったです。
上野英信を読み直したので、夫人の上野晴子の本を読み、勢いで子息の上野朱の本も読んでぼーっとしています。

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